ハードコンタクトを使う人がずいぶん減ったと、すっかり白髪になった髪の毛をかきあげながら眼科医は言った。
もうコンタクトの扱いを始めてから30年くらいたつ。金額も高かった。1枚1万も2万円もした。
眼科ですべてやろうものなら 5万円から6万円は必要だった。
しかし 使い捨てコンタクトの登場や激安コンタクト店の登場ですっかりコンタクトレンズも安くなったのだ。
そんな中、ハードコンタクトは今では少ないながら コアなファンに支えられて、いやコアなファンに縋られ頼りにされながら孤高の生存を続けている。
コンタクトレンズといえばハードコンタクトだった
昔、とは言っても 30年位前はコンタクトはハードレンズしかなかったのだ。
「痛い、ずれる、落ちる、慣れるのに時間がかかる」これらは ハードコンタクトの出来事だ。
そのころ コンタクトを使い始める人は夏休みにスタートするといいと言われた。なぜかって?
そりゃ慣れるのに期間が必要だからさ。眼科で処方してもらってレンズがくるのに3日かかる。そのレンズを目に入れて処方が正しかったか判断するのに2日~3日通って結果が出る。
さらにはレンズのはめはずしの練習に1日、使い始めは落とすといけないから1日目は3時間、2日目は4時間、3日目は
5時間と1日1時間づつ増やしていく。
よって12時時間くらい使えるようになるのに10日間くらいかかるわけだ。
さらに眼科の医者は3日ごとに検査に来いだと。大仕事だったよ。
風が吹けば埃やごみが目に入って痛い、スポーツして目を早く大きく動かすとずれる。
苦労も多かった。失くせば1枚 1万円~2万円だぜ。ほんとに涙が出るぜ。
でも、ハードコンタクトに慣れて、すっかり自分の身体の一部だなって感じれるようになった頃には本当に愛おしい存在になっていた。たぶん この経験を持つ人たちはみんなあのころ「命の次に大事なものは何か?」て聞かれたらコンタクトレンズと答えたと思う。もし大地震が来て何かたった一つ持って逃げれるとしたら家族以外なら迷わずハードコンタクトを選んだだろう。
目の悪い人にとってコンタクトレンズは本当に福音だったんだ。考えてもみなよ。あのころの日本人はみんな牛乳瓶の底のようなグリグリめがねをかけてみんな同じ顔して歩いてた。女の子はメガネがイヤだから見えないけどメガネをはずしてぼーとした情景のなかをさまようように歩いてたんだぜ。
それを思えばコンタクトレンズのありがたみ!わかるよな。
だから、「痛い、ずれる、落ちる、慣れるのに時間がかかる」というハードコンタクトの大いなる悩みを我慢しきって使ってたんだ。おもしろいことに目の悪い人ほどハードコンタクトをうまく使ったんだ。
そりゃそうさ、牛乳瓶の底から見た風景とコンタクトをして見た風景の格段な違い。牛乳瓶から見た風景とはっきり見えて裸眼と同じ感覚のコンタクトを透した風景の見え方の違いに感動があったんだ。
特に女の子はすぐに上手に使ってたな。美しくなるのに敵なんかいないんだ。
一番うまくいかないのが、あまり目の悪くない奴と神経質すぎる奴。
必要性を感じないと障害が乗り切れないんだね。また、必要性が本人の嗜好を超えないと極楽まで行けないんだね。
ソフトコンタクト登場
このころコンタクトレンズと言えば当たり前だがハードコンタクトのことだった。
ところが昭和50年ごろ ソフトコンタクトが発売された。
柔らかくて痛くない、ゴロゴロしない。落ちない、すぐなれる。
今までのハードコンタクトの欠点がすべて解決したようなふにゃふにゃ野郎だ。
そりゃたちまち人気になったよ。
だってすぐ使えるんだぜ、スポーツにも向いてるし、慣れるまでの修行をしなくていい!
でも、そのうちこいつもいろいろ言われるようになった。
汚れやすくて乾燥しやすくてすぐ寿命がくる。
眼に傷があっても気がつかないので重篤な角膜障害を起こす。
ケアをいろいろしなきゃいけないので手入れが面倒
眼科の先生の中には「ソフトコンタクトは危険だからハードコンタクトにしなさい」なんていう先生も多かったね。
もっとも 「コンタクトレンズなんてとんでもない。眼の中に異物を入れるなんてもってのほか!メガネにしなさい」なんて先生も多かったよ。
使い捨てコンタククト登場
平成の世になったころからだろうか。使い捨てコンタクトなんてやつが登場してきた。
要はソフトコンタクトなんだがこれを大量に用意してどんどん使ったら捨てちゃえてやつだ。
確かに 汚れる前に捨てるから目に汚れが害を及ぼすことがない。
すぐ捨てるならケアもそんなに大げさにすることもない。特に毎日交換するならケアそのものが不要だ。
良く出来てる。お金のことと捨てるということに戦前のもったいないを考えなければ。
しかし 面白いことにこれにも眼科の先生は顔をそむけたんだ。
捨てるなんて日本人には向かない。捨てなかったどうするんだ。
捨てるのではなく眼科でそのレンズを回収させろ!回収したら新しいレンズを渡してやる。
こんな感じだったかな。
ハードコンタクトは生きてるぜ!
相変わらずあのおばちゃんはやってくる。
ハードコンタクトを50年前から使っているという凄い元気なおばちゃんだ。
あんたが生まれる前から わたしゃコンタクトを使ってるんだよ!
あいかわらずこの物言いだ。当然 アクリル100%のパーフェクトなハードコンタクトだ。
こんなもの日本中探したってそう手に入らない。
でもこのおばちゃんにはこのハードが一番合うようなのだ。
シリコンやホウ素が入った酸素透過性ハードコンタクトはともすると汚れやすく、素材として不安定だ。
それに対しアクリル%のハードは確かに硬く装用感の悪さ、酸素透過性のなさで長時間装用には不向きだ。
でもそれだけ このハードレンズは正直なのだ。
眼やレンズに異常があれば痛い、痛いから使わない、痛いから眼科に行く。
ごまかしが通用しないのだ。ハードコンタクトで修行しまっくた世代にだけ通用するすごい硬派なのだ。
若者よハードレンズで己を鍛えんかい!
酸素透過性ハードコンタクトの時代だったぜ♪
O2ハード酸素透過性ハードレンズともいうがこのオーツーの時代は結構長かった。ハードにするならオーツーというのが当たり前だった。もちろんいくらか値段は高かった。どんどん新しいオーツーが出て古い酸素の透過性の低いハードは安くなったが新しい酸素透過性の高いハードがどんどん値段を高くしていった。いや高いところで価格をとどまらせていた。
使い捨てコンタクトがやってくるまではね。
メニコンO2→メニコンEX→メニコンスーパーEX→メニコンZ
なんてのはこの新製品、酸素透過係数アップ作戦の典型的パターンだったね。
シードでいえば
シードHiO2→シードスーパーHiO2→シードA-1→シードS-1
このハードレンズ時代は国内コンタクトレンズのメーカーが元気だったんだ。
メニコン、シード、日コン、HOYA、東レ、アイミー、クラレ、レインボーみんな国内メーカーさ。
でもこれも使い捨てコンタクト時代前までだけどね。
ハードコンタクトの時代はどこへ行ってしまったんだ~
これほど愛されていたハードコンタクトはどーしちゃたんだろうね。
昭和53年ころかな、ソフトコンタクトレンズの登場で徐々にハードコンタクトはその地位を削られるようになってきた。
なぜか?
それはソフトコンタクトがとっても装用感(つけた感じ)が楽だったから。
ソフトはヘマという水分を透過させるプラスチックでできているんだ。プラスチックで水分を透過させるとういうことは
角膜に必要な涙や涙の中に混じっている酸素も通すということ。
一応はプラスチックの仲間なのだが分子の間隔が広いので水分を通すのだね。要は水の分子よりプラスチックの間隔が広いのだね。
なぜハードコンタクトはわざっと黒目より小さく作ったのか?なぜ目の中で動くように処方するのかは別のページでお話しします。
そのためハードコンタクトのように角膜よりも小さくすることもないし、目の中で動く必要がない。
よってごろごろしないから装用感がいい。
これでどんどんハードコンタクトではなくソフトコンタクトの使用者が増えるようになったんだ。
それでも初めのころはソフトレンズはそれなりにいろいろトラブルがあって眼科の先生方は勧めなかったんだ。
レンズに汚れが蓄積してそれが目に障害を起こす可能性があること。
ソフトレンズは包帯や絆創膏と一緒で目にキズがあってもソフトレンズをつけるとキズがあるのに痛みを感じなくなってしまい、目の・キズが進行しても気がつかないこと。
ハードレンズにくらべ手入れが面倒で使用者が正しい取り扱いができない恐れがあること。
寿命が1年~1年半くらいで古くなったレンズを使い続けることが心配など
たしかにソフトコンタクトはデビューしてから性能がどんどん良くなったにもかかわらず相変わらず眼科の先生方には評判は良くなかったんだ。
それが風向きが変わったのが使い捨てコンタクトという別のカテゴリーを頂戴してからなのです。
使い捨てコンタクトレンズはソフトレンズなのです。ソフトレンズを期間を決めて数量をまとめて渡すようにしたのが使い捨てコンタクトなのです。だから使い捨てコンタクトもソフトコンタクトも装用感は一緒。
違うのは使える期間が短く決まられていて志乃期間が来たらすててしまい新しいレンズを使いことだけです。
でもこれが良かったんですね。
要は汚れがソフトコンタクトに蓄積してしまう前に変えてしまうから目に障害を起こしにくいのです。
そんなこんなで ハードコンタクトは使い捨てコンタクトにすっかり置いてきぼりを食っちゃたんだね。
もうひとつグチをいわせて・・・・
それはコンタクトレンズを使う人が我慢強くなくなったこと。
ハードレンズって初めいれるとごろごろしてちょっと痛くて、目を動かすとずれたり落ちたり、風の強い日には目を開けられないくらい本当に痛い。
でも、そうやってハードコンタクとを使う人はなれてきたのです。
使えるようになってきたのです。それはレンズを入れた時の見える喜びやありがたさがその異物感や痛みやゴロゴロよりもずーと大きかったから使ってこれたのです。
このありがたみは度が強い人ほどわかります。乱視が強くてソフトで矯正できない人ほどわかります。
メガネでは絶対美しくなれないと感じるメガネの似合わない美しい女性ほどわかります。
多少のゴロゴロや異物感などハードのありがたみを感じた人には大した障害にはならなかったのです。
でも、このところちょっとでも異物感があればソフトコンタクトである使い捨てコンタクトにしてしまう根性無しが多くなったのです。
ちょっとハードで頑張ってみな!
ハードコンタクトの使い方ハードコンタクトは結構はずすのがむずかしい。俺が教えてもいいが面倒なので下記のサイトで見てくれ
ハードコンタクト使い方・取扱方法
環境問題でハードコンタクトが復活するかも
最近のニュースで使い捨てコンタクトが環境問題を起こしているというのがあった。使い捨てコンタクトは使ったらゴミ箱に捨てられるはずなのだが、何故か河川に流れ込み、これが海に流れ着きマイクロプラスチックとして海洋に蓄積されているそうなのだ。
アメリカでは驚いたことに毎年6トン~8トンが河川に流されているという。捨てられた使い捨てコンタクトはやわらかいため細かく破砕してマイクロプラスチックとして蓄積するのだ。でも何故ゴミ箱し捨てられないで川に流れていってしまうのか不思議なところもある。だがそろそろ「使い捨て」という資源の無駄遣いと環境に負荷をかける行いを考え改めるところに来ているかもしれない。この問題もハードコンタクトなら安心だ。なにせ使用できる期間が長い。上手に使えば2年くらい使える。
究極のエコはハードレンズかもしれない
最近、使い捨てコンタクトはカラーであったり、素材がシルリコンであったり次から次へと新商品が登場している。しかし、環境への負荷を軽減することは全く考慮されていなし。使い捨てコンタクトは毎日交換すれば相当なりょうになる。2週間使い捨てや1ヶ月使い捨てでもレンズ自体の廃棄量は14分の1や30分の1にはなるがこのケア用品での洗浄や保存液が環境の負荷になる。ましてやケア用品のプラスチックボトルがペットボトルと同じ環境への負荷になる。それを考えるとハードコンタクトは究極のエコだ。上手に使えば1枚で2年位使用できる。ハードレンズの容器は小さく長期に使用でき、これに満たす保存液も少量だ。使い捨てコンタクトが登場してからすっかり時代遅れの遺物になっていたハードレンズはよく考えるとコンタクトレンズの将来のあるべき姿なのかもしれない。
コンタクトレンズだって通販で買える時代だ
最近はすっかり通販が一般的になってきて使い捨てコンタクトは通販で買える。価格も安い。目はしっかり眼科で定期的に検査してもらう必要があるが便利になったものだ。
ハードコンタクトだって通販で買える。データの入力が使い捨てより面倒だが慣れればこれも簡単だ。なぜか今までは眼科で患者に処方したコンタクトレンズのデータを伝えてこなかった。患者から検査料を取っているなら当然どーゆう処方がされたのか伝えるのが常識だ。徐々にではあるが良識をもった先方が増えているのは嬉しいことだ。